骨軟部腫瘍

立川病院整形外科 骨軟部腫瘍診療の特色

当科は地域医療支援病院における骨軟部腫瘍外科として下記をモットーに診療に取り組みます。


1. 地域で最初にかかれる骨軟部腫瘍診療可能施設

2. 高度専門施設のバックアップと連携

3. がんと共存する時代の骨転移診療

骨軟部腫瘍とは

首から下の骨や、筋肉、神経、血管、皮下組織などに生じた『できもの・しこり』は整形外科での治療対象となります。骨にできた場合が骨腫瘍で、骨以外の筋肉、神経、血管、皮下組織など柔らかいところにできた場合は軟部腫瘍と言います。

腫れや痛みなどの自覚症状で気づいたり、無症状であるが、たまたまとったX線写真に異常が写り気がつかれます。手足などの表面にあるものは小さいうちに見つかりますが、臀部や太ももの深いところ、背中など手が届かないところは、なかなか気づかず、かなり大きくなってから見つかることが多いようです。

代表症例画像

骨軟部腫瘍の診断

骨軟部腫瘍の診察は、問診、患部の診察、血液検査、X線、MRI、骨腫瘍ではCT、骨シンチ、ガリウムシンチ、最近ではPET-CTなどを加えた画像診断を患者様ごとの必要性に応じて行います。

診察および諸検査より、良性の可能性が高く、特に困った症状がなく、進行の可能性が低い時は、あわてて切除を考えなくてもよいです。良性でも痛みなどの症状で困っている場合やサイズの増大が見込まれ時間がたつことで治療がより大掛かりになると予想される際は、切除をおすすめしています。悪性が疑われる場合、良悪性が不明の場合は生検術をおすすめします。腫瘍が小さい場合(だいたい3cm以下)は診断と治療を兼ねて腫瘍全体を切除する切除生検を行いますし、腫瘍が大きい場合は腫瘍の一部をサンプルとしてとり顕微鏡による組織診断をまず行い、その上で切除を計画するか、経過観察でいくか判断します。生検の方法も、手術室で麻酔下に切開してとる直視下生検、深いところの腫瘍に対しCT室でCT画像を見ながら針を刺してとる針生検などの様々な方法を使い分けます。

骨軟部腫瘍における集学的治療

画像診断の解釈や適切な治療計画の策定、再発、転移を防ぎ機能を温存する手術、切除された腫瘍の病理診断など、診断・治療に関する一連のステップには高度に専門的な知識や判断、技術が要求され、どこの病院でもできることではありません。立川病院において放射線診断医病理診断医は骨軟部腫瘍に対する造詣が深く、整形外科の立場からは信頼しております。また手術でいうと、例えば腫瘍切除後の皮膚・軟部組織欠損が大きく創が閉じられない症例は、あらかじめ形成外科医を含めたチーム医療が必要です。肋骨など胸壁の腫瘍は胸部外科医、骨盤の腫瘍に対しては外科医・泌尿器科医などと協力して手術が行われます。また術中出血を減らし安全な手術を遂行するために、手術前に放射線診断医による腫瘍栄養動脈塞栓術を行う症例もあります。腫瘍の治療は手術のみではなく放射線治療、抗がん剤による治療などが適応される症例もあり、適切な治療法の選択が重要です。手術後の機能回復にはリハビリ医を初めとしたリハビリテーションチームの役割も重要です。当院は骨軟部腫瘍を専門とする整形外科医と、サポートする関連各科が骨軟部腫瘍に習熟しており、安心して受診頂けるものと自負しております。

骨・軟部肉腫に対する取り組み

骨軟部腫瘍の中で悪性のものを骨・軟部肉腫と言います。骨・軟部肉腫の患者数は少なく稀少癌として政策的にも特別な対応が模索されています。この分野の整形外科専門医も同様に少なく、多くは大学病院や各県のがんセンターに属しています。したがって骨軟部腫瘍を取り扱う病院も限られております。当科では1997年以後、慶應義塾大学整形外科の骨軟部腫瘍グループより継続的に専門医が派遣され、画像診断医・治療医、病理診断医とともにパラメディカルを含め医療チームとして経験を積み重ねてきており、地域で最初にかかれる骨軟部腫瘍診療可能施設としての役割を果たしています。

また当科では患者様の地元で治療が完結できるように、治療が難しい症例であっても出身大学である慶應義塾大学整形外科学教室より応援をえて高度な手術治療も実施しております。しかし、まだまだ治療が確立する途上にある稀少癌(発生件数の少ない癌)である骨肉腫、ユーイング肉腫などは、慶應病院や国立がんセンターなどの高度専門施設での診療が治療成績向上のために不可欠であり、これらの患者様には信頼できる医療機関を紹介させて頂きます。ただし紹介して終わりということではなく、紹介先での手術後にリハビリテーション目的転入院や、紹介先での抗がん剤治療後の骨髄抑制管理目的通院など、その後も協力して治療にあたります。

このように当科は高度専門施設のバックアップおよび連携により患者様の入院・通院の負担軽減に努めます。

骨転移に対する取り組み

肺や乳腺など内臓を始めとした他部位に生じた癌が、骨に血流を介して移ってきて成長増大したもの骨転移と言います。近年がん治療の進歩により、癌と共存しながら生活を続けていく患者様が増えております。以前は癌が他部位に転移したらもうだめだとあきらめていましたが、近年は抗がん剤、分子標的薬などの薬物療法が癌との共存を可能としつつあります。そうした中で原発部位は根治や制御されているにもかかわらず、骨に癌が転移して、痛みや機能障害でお困りになる方が多数みられます。一方、骨転移巣が先にみつかり、あとから内臓を調べて原発部位がみつかる患者様もいます。当科では骨転移の患者様の診断、治療に際しイニシアチブをとり、骨転移巣の切除や、病的骨折や骨折予防の手術、脊髄麻痺に対する手術などを積極的に行っております。治療をすすめるにあたっては、骨転移巣の状態、患者様の生命力を総合的に判断し、メリット、リスクなどを正確に把握し患者様にお伝えしたうえで、なにより患者様の希望を優先して治療方針を決めております。


もちろん痛みや機能障害の治療は手術のみでなく、緩和ケアチームと連携してのオピオイド、鎮痛補助薬を用いた癌疼痛緩和、放射線治療科と連携した放射線治療、骨転移の治療と並行し、機能を維持回復させるリハビリテーション科との連携、在宅へ戻る際や後方の医療機関へ転院する際には医療相談員と連携するなど、多職種で連携して患者様やご家族をサポート致します。

骨転移は最も多い骨悪性腫瘍でありながら、癌の終末像として従来は消極的な対応に終始した時代があり、病院によっては今でも変わらないかもしれません。がんと共存する時代の骨転移診療を実践すべく、当科は積極的に関与していきます。



下記も御覧下さい。

健康コラム 『うでや脚のしこり』『骨転移と言われたら

慶應義塾大学整形外科学教室骨・軟部腫瘍グループhttp://www.keio-ortho.jp/orthopaedic/group04.html