脳腫瘍

頭蓋骨の内側にくっついている膜、硬膜から発生する良性腫瘍です。術中のナビゲーションや術中電気生理モニターを行いながら、術後新たな神経症状がでないように工夫をして手術を行っております。




この患者さんも手術で腫瘍はほぼ全摘でき、術後追加治療は不要でした。

ぼっとする軽度の意識障害も、退院数か月で、完全にもとにもどりました。

髄膜腫の特徴と治療:

髄膜腫は、脳を取り囲む硬膜のどこでも発生します。腫瘍が大きくなると正常脳に脳浮腫が発生し症状が出ます。髄膜腫が、脳神経を圧迫すると、視力視野障害、複視、顔面麻痺、聴力障害、嚥下障害、嗄声などの症状につながる可能性があります。

腫瘍の部位や特徴をよく検討し、手術摘出が必要な髄膜腫は、手術中の運動機能モニターや脳神経モニターを行い、術中超音波画像を参考に、手術を行います。

術後聴力の悪化なく、2週間弱の入院で退院された。

専用の神経内視鏡を用いて、ハイビジョンの内視鏡画像をみながら、両側鼻孔から手術を行います。髄液漏が生じないように腫瘍をとりますが、癒着が強く髄液漏が生じた場合には、鼻中隔粘膜弁を作成し、髄液漏を閉鎖して手術を終了します。

 手術の適応は、①腫瘍の視神経圧迫による視力低下や視野障害が出現した場合、② 腫瘍による下垂体圧迫により下垂体機能不全症状が出現した場合(GH産生低下による小人症など)、③ ホルモン産生腫瘍により過剰に分泌されたホルモン症状が出現している場合(末端肥大症、クッシング病など)などです。

 当施設では神経内視鏡を用いて腫瘍の境界をよく観察確認し、先端が30度や70度の角度の内視鏡も使用し、海綿静脈洞側壁に癒着した腫瘍の摘出、頸動脈裏側の腫瘍の摘出、トルコ鞍外上方に進展した腫瘍の摘出を行います。

術後下垂体腫瘍は全摘出され、外来通院している。



ホルモン産生腫瘍は、造影されにくい黒いところ。1cm以下の腫瘍は全摘出され、成長ホルモンの値は正常になった。
 
 
  

頭蓋咽頭腫も経鼻的内視鏡手術の良い適応となる症例がある。頭蓋咽頭腫は、取り残すと良性腫瘍であっても少しずつ再発し、最終的に見当識障害、意識障害と進行して命にかかわる可能性がありうる腫瘍である。初回手術で、全摘出可能であることが難しいが、もっとも望ましい治療である。上記の症例も、術後腫瘍は描出されないが、手術は、一部視交叉の後方で脳に浸潤する部分があり、全摘出したため、腫瘍の残存はなく、画像フォロー検査を定期的に行っている。

残存がある場合は、定位放射線治療を施行する予定である。

聴神経腫瘍の特徴と治療

 

耳の後ろの聴神経から発生する神経の腫瘍で、聴力障害の精査などで発見されます。聴神経のすぐ近くに顔面神経にがあるため、術中持続筋電図モニターを行い、顔面麻痺が生じないように腫瘍の摘出を行います。術前に聴力が残っている場合は、術中に聴神経モニターを行いながら、なるべく聴力も残るように腫瘍摘出を行います。

 

術後症状を出さないための当院での聴神経腫瘍摘出術時の電気生理学的モニタリングは、以下の通りです。

1)顔面神経の位置の同定
腫瘍の一部を電気刺激して、顔面筋から筋電図反応がでると、腫瘍に対してどこに顔面神経があることがわかります。

2)顔面神経機能の持続モニター
腫瘍よりも脳幹側で刺激をして、顔面筋から筋電図反応を記録します。顔面麻痺が出ないように腫瘍を摘出します。


3)耳が聞こえている場合
聴性脳幹反応(ABR)といって、手術中に耳にセットしたイヤホンから音を出して頭皮上からその反応を記録します。この反応が低下しないように腫瘍摘出を行い、聴力が残せる可能性があります。ABRや聴神経からの直接神経活動電位(CNAP)を測定し、手術中の聴神経機能モニターと蝸牛神経の同定をすることによって、聴力保存をめざしています。

左の内耳道後壁という骨を削り、内耳道内まで腫瘍をとりました。

顔面神経の持続モニター電位変化がないことを確認しています。
この変化が50%以下なら術後顔面麻痺は出ないことになります。

別の聴力を残した聴神経腫瘍の患者さんをご紹介します。

経過観察中に腫瘍が増大、聴力が残っていたため、聴力を保つようにモニターして腫瘍を摘出。

術後の顔面麻痺も聴力も保たれて手術で悪化しなかった。

①の電位が悪化しないで腫瘍をとると聴力が残ります。

ABRも低下しないように注意します。

②の電位が記録されるところの裏側に蝸牛神経(音をきくための神経)が隠れています。

脳の細胞は、主に神経細胞とグリア細胞です。グリア細胞の腫瘍が悪性脳腫瘍の代表的なグリオーマです。どこの脳にも発生し、発生した部分の脳の機能障害や正常脳が圧迫されて、運動麻痺や失語症などで発症することがあります。腫瘍はできるだけ多く摘出することが大切ですが、術後神経症状につながらない部分の摘出をすることが大切になります。そのために、電気生理学的モニターとして誘発電位や誘発筋電図の測定を行います。

術後の化学療法は、腫瘍組織診断の結果により、最も効果がある薬の投与を行います。早期からアバスチンという腫瘍血流を抑える薬を使用し、トモセラピーという定位放射線治療が江戸川病院との連携治療で可能です。トモセラピーは、できるだけ正常脳組織への照射を抑えて、腫瘍組織に照射する特殊な放射線治療システムで、いままでの治療法でできなかった腫瘍のコントロールが可能で、治療成績を向上させています。

癌が脳に転移したのが転移性脳腫瘍です。腫瘍周囲の正常脳に浮腫が広がる特徴があり、正常脳に及んだ浮腫や、腫瘍そのものの脳圧迫によって運動麻痺などの神経症状が出ている場合には、ある程度大きくなった腫瘍本体を摘出することで、その神経症状が改善する可能性があります。

腫瘍本体へは、手術ナビゲーションによる腫瘍の位置確認だけでなく、超音波装置による術中のモニターを行い、手術中に変化する腫瘍の位置と残存部位を確認します。悪性グリオーマ同様に、トモテラピーという悪性腫瘍専用の放射線治療を検討し、治療成績が向上しています。